イルメール島には、風のように柔らかく、
花のようにやさしく生きる、ふしぎな生き物がいる。
その名は「イーリス」。
ふわふわの体に、猫のような見た目。
うさぎに近い生態のイーリスは、
イルメール島にしか
存在しない精霊。

そんなイーリスたちの中で、
一番はじめに誕生した
“イーリスの始祖”が「ククレ」だ。

イーリスたちはそれぞれの色を持ち、
その色の心を宿して生まれてくるが、
ごくまれに、さまざまな心の色が重なり、
くすんだ色の精霊が生まれることがある。
そうしたイーリスは「ミクス」と呼ばれ、
ククレもまた、そのミクスの個体だった。

イーリスたちが守っているのは、
大樹の根元にひっそりと隠された
「心のタマゴ」。
かつてこの島を創った王が、
島に満ちてしまった悲しみや怒り、
不安や嫉みといった
“負の心”を
そっと閉じ込めたものだ。

イーリスは風にまぎれて届く、他の生き物や
草木に隠れた「心の色」を
感じることができ、
それらが抱える負の色の心を吸い込んで、
島中に癒しを与え続けている。

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イルメール島の平和を守る儀式 “ピュリー”

満月の夜が、静かに森を包む。
心のタマゴとイーリスたちの中に宿った負の心を、
静かに、そして優しく浄化する夜がやってきた。
ククレは、その夜だけ特別な姿「ジアイボウ」となり、
月に向かって真の力を解き放つ。
ジアイボウの体は、月の光を浴びるたびに
透き通っていき、光の粒となって輝きはじめる。
その光に導かれるように、イーリスたちが集まると、それぞれの色をした光の帯が
体から解き放たれ、
まるで七夕の天の川のように、静かに揺れながら、
負の心は空へと還っていった。
負の心を浄化されたイーリスたちは、今日もどこかで、イルメール島の平和をひっそりと守っている。